ガラクタ道中拾い旅













最終話 ガラクタ人生拾い旅












STEP3 手がかりを拾う





























旅に出たトヨ達だが、道を歩いていたところ、早速盗賊達と出くわした。

「おうおう、この道が誰の物か知ってて通ろうってのか?」

「有り金全部置いていけ!」

「お、連れてるガキは中々良い顔してんじゃねぇか。ついでにそいつも置いてけよ。良い値で売り飛ばしてやるからよ!」

下卑た笑い声をあげる盗賊達に、トヨとシグは顔を険しくし、ヨシだけは呆れた顔をしている。それどころか、懐かしそうだ。

「あー……ワクァと旅してる時も、よくいたわ、こういう奴ら。大体ワクァがキレて、一人で全部片付けてたっけ」

「ヨシさん、そんな悠長な!」

「こういう奴らがいるから、戦う術を持たない人は旅をしたくてもできないんだって、父様がぼやいてたよ! 一人残らず倒さないと!」

トヨとシグが、揃って腰の剣に手をかける。ヨシは「そうねー」と言いながら鞄に手を突っ込んだ。

「じゃあ、まぁ……容赦なくやりましょうって事で」

ヨシが言った途端に、トヨとシグは剣を抜き放った。

「行くよ、カイ!」

トヨは叫び、盗賊達に勇敢に突っ込んでいく。その様に、ヨシが思わず苦笑した。

「剣の名前を呼ぶところまで、親譲りなわけね……」

そう言いながら、鞄から取り出したのは糸玉だ。糸と言っても、中々太くて丈夫そうな糸ではあるが。

玉の部分にがっちりと糸が固めて巻いてある事を確認すると、端を左手に掴んだまま、「ほいっ」と言って思い切り投げ付ける。糸は、迫りくる男の横を掠めて飛んでいった。

「おいおい、どこ見て投げてんだ? しかも糸玉なんざ……」

言い掛けた時、糸玉が戻ってきた。今度は、男の横ではない。股を潜っている。

妙に小さくなった糸玉を右手に回収し、ヨシは「うん」と楽しそうに頷いた。

「はーい、盗賊の皆さーん。ちょっと足下、見てみてくれる?」

言われて見るような者は、一人もいなかった。ヨシは、少し残念そうに「ちぇっ」と呟く。

「すっごい芸術的にできたから、誰かに見て欲しかったんだけどなー」

誰も知る由も無い事だが、糸玉は飛んでいった後、木にぶつかり、地面にぶつかり、岩にぶつかり、誰かにぶつかり、を繰り返し、あっという間に地面中に糸を張り巡らせている。しかも、どのような力加減をしたものか、一箇所たりとも緩んでいない。

ヨシはニヤリと笑うと、足で石を蹴る。石は真っ直ぐに飛び、襲い掛かろうとしていた男の眉間に的中。男が思わず倒れた途端に、地面に張り巡らされた糸が引っ張られ、何人もの盗賊が一斉にすっ転んだ。

更に、糸を手繰り寄せると倒れた男達がそのまままとめて絡め捕られてしまう。ある程度まとまったところで、ヨシは男達を糸でぐるぐる巻きにした。ぱんぱんと手をはたき、「一丁上がり!」と楽しそうに言う。

そして、残りの数を指で数え、あとは危なくなった時だけ加勢しようとでも思ったのか傍観し始めた。大体、ワクァと旅をしていた時の基本と同じパターンである。

シグが使うのは、大剣クレイモア。刀身が一メートル以上もあり、両手で持たなければ扱えないような重い剣だ。

それを、シグは片手で扱っている。そう言えば、彼は子どもの頃既にこのクレイモアを持っていた。その時は両手だったが、そもそも本来は子どもに扱えるような剣ではない。

大人しい性格のためにわからなかったが、元々力持ちだったのだ。ファルゥが彼は元から剣士として強いと言ったのも、そのためだろう。成長した今ではヨシより二十センチ以上背が高くなり、しっかりとした体格になっている。

恵まれた体躯と、天性の大力、そして大剣。軽く一振りしただけで、敵の被害は甚大だ。おまけに、剣術の基礎もしっかりと習得している。これで弱いわけがない。

トヨは、ワクァとの手合わせを見た時にも思ったが、剣の扱いが天才的だ。素早く、そして的確に敵の嫌がる場所を狙って剣を振る。ズボンのベルトや、足を狙って攻撃を仕掛け、相手の命を奪わず戦闘力を下げる戦い方も、ワクァにそっくりだと思う。

この場にワクァがいて、一緒に戦っていれば、きっと見ものだったろう。ヒモトが加われば、似たような戦い方をする者が三人もいて、更に面白かったかもしれない。

そう考えたら、不意に涙が出た。それをすぐさま拭い取り、空を仰ぎ見た。

「トヨくん、頑張ってるわよ。だからワクァ……アンタも、頑張りなさいよ。トヨくんの頑張りを無駄にして死ぬような事があったら、許さないんだから……!」

ヘルブ街の方角に向かって呟く。そうしている間に、盗賊達は一人残らず、地に倒れ伏した。













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