ガラクタ道中拾い旅
最終話 ガラクタ人生拾い旅
STEP2 新たな旅を拾う
5
「行ってしまわれましたわね……」
「えぇ……」
日が陰り出した中庭で、ファルゥとニナンはぼんやりと佇んでいる。二人はこれから、できるだけ長い時間、トヨの不在をワクァ達に気付かれないようにしなければならない。
聞いた話によれば、自分達が知るワクァのイメージとは裏腹に、非常に息子を可愛がり、家族を大切にしているという事だ。それ自体は結構な事だが、そこまで家族を大事にしているとなると、病床にあっても、トヨが城内にいなければすぐに気付くかもしれない。
「頑張らなければいけませんわね」
「えぇ。それに、もう一つ……」
言葉を新たに発したニナンに、ファルゥは頷いた。
「そうでしたわね。ワクァ様に毒を盛った人間がいるかもしれない……。私達はこのお城に滞在している間に、その犯人を捜さなければいけませんわ」
「もし本当に毒が盛られていたとしたら……犯人を見付けて捕まえれば、それで陛下は助かるかもしれません」
「解毒剤を持っているかもしれない。持っていなくとも、毒の種類が特定できればこちらで対処できる……ですわね?」
ニナンが頷き、ファルゥは気合を入れるように両拳を握った。大人になってはいるが、剣士に憧れて剣を握り、木剣一本で盗賊に立ち向かっていった性格は変わっていない。
「早速今から、聞き込みを始めましょう!」
「今からですか!? 流石に、それは……。もし本当に犯人がいたりした場合、急に動き出したりしたら気取られますよ! 慎重に動きませんと……」
「それも……そうですわね」
ファルゥはしゅんと項垂れ、そしてすぐに持ち直すと、拳を再度強く握りしめた。
「ならば、今日はトヨ様不在を誤魔化す事に全力を注ぐ事と致しましょう! 何が何でも、誤魔化しますわ!」
「あの……あんまり気合を入れ過ぎると、それはそれでばれ易くなる気がするんですが……」
「あ、ニナン様、ファルゥ様!」
突然横から声をかけられ、ニナンとファルゥは跳び上がらんばかりに驚いた。見れば、トゥモがそこにいて手招きをしている。
領主のニナンと、領主の娘であるファルゥ。そして、ワクァの護衛隊長であるトゥモ。身分的には気安く話して良いような間柄ではないのだが、子どもの頃に親しんでいた事もあり、今でも当時のように話ができる関係だ。
「とぅ……トゥモ様!」
「今の話……?」
焦るニナン達に、トゥモは首を傾げた。どうやら、聞こえていなかったようだ。
ホッとした二人に、トゥモは言う。
「お二人を、ワクァが呼んでたっスよ?」
その言葉に、ホッとしていた筈の二人は、再び固まる事となった。
一体、何の用だろうか? まさか、もうバレたとは思いたくないが……。
緊張した面持ちで、二人はトゥモと共に歩き出す。その様子に、トゥモが不思議そうに首を傾げた。