ガラクタ道中拾い旅
最終話 ガラクタ人生拾い旅
STEP2 新たな旅を拾う
1
「陛下は、お若い頃より心にも体にも苦労を積み重ねてこられたお方。それが今、病となって表に現れたのでしょう」
暗い面持ちで、医師がそう告げた。部屋に集っているのは、ヨシとトゥモ、フォルコにウトゥア。そして、ヒモトとトヨに、先代の王と王妃。心配そうな顔をする人々に囲まれ、寝台に横たわったワクァは弱々しい呼吸を繰り返している。
「陛下の容体は、どのような……?」
フォルコの問いに、医師は首を横に振る。
「今すぐどうなる、というものではございますまい。ですが、恐らく……お命は長くても、あと三年はもたないかと……」
場が、静まり返った。
「三年……」
トヨが、ぽつりと呟いた。一同がハッとした時には、トヨはもう医師に詰め寄っている。
「嘘でしょ? ……嘘だよね? 父様があと三年生きられないなんて、嘘だって言ってよ! ねぇ!」
必死の形相で叫ぶトヨに、医師は言葉無く首を振った。トヨは顔を引き攣らせると、横たわるワクァの腕に取り縋る。
「父様! ねぇ、嘘でしょ? 父様は死なないよね? ずっと元気で、僕が大人になるまで、手合わせしてくれるよね? ねぇ!?」
「殿下、陛下のお体に障ります。今はお静かに」
思わず、フォルコが嗜めた。すると、トヨは目に涙を溜め、部屋を駆け出してしまう。
「殿下!」
「私が行くわ。ヒモトちゃん達はワクァについてて!」
「じ、自分も行くっス!」
ヨシとトゥモが、トヨの後を追って部屋を出る。それに、フォルコも続こうとした。その時だ。
「……フォルコ」
微かな声に、フォルコは足を止めた。振り返れば、ワクァが薄らと目を開き、フォルコを見ている。
「陛下! お加減は……」
「大丈夫だ……」
ワクァはヒモトと医師に目配せをすると、二人の力を借りて上体を起こす。先の王と王妃、それにフォルコが心配そうな顔をする中、ワクァは掠れた声で言った。
「フォルコ……トヨとヨシ達がいない間に、話がある。それに、父さんと母さんにも……」
三人が困惑した顔を見合わせると、ワクァは弱々しい顔で苦笑した。