ガラクタ道中拾い旅










第六話 証の子守唄












STEP3 真実を拾う















大通りを走り、小道に入って何度か角を曲がって。ひと気の無い路地裏に入り込んだ時、やっとヨシはワクァに追い付いた。……追い付いた、と言うよりは、ワクァが足を止めた、と言った方が正しい。

「ワクァ!」

ヨシが声をかけると同時に、ワクァは力無くその場に座り込んだ。これ以上は、立っている事もできないかのように。

「ワクァ!?」

不安になり、傍へと駆け寄る。薄暗がりで俯いたその顔は、今どうなっているのか見る事ができない。

「……まさか、こんな事になるとはな……」

「……ワクァ?」

か細い声に、ヨシは眉をひそめた。ワクァの口からは、ぽつりぽつりと言葉がこぼれ出てくる。

「まさか、こんなにあっさり……両親と会えるとは思っていなかった。……しかも、この国の王と后とは……予想外も良いところだ……」

「ワクァ……じゃあ、やっぱり王様とお后様は、ワクァの……?」

ワクァは、首を縦にも横にも振らなかった。

「確証があるわけじゃない。だが……直感が告げているとでも言うのか……。あれは確かに、夢の中で俺を呼んでくれた声で……夢の中で歌ってもらった、歌声だった……」

「じゃあ、なんで……!」

何故、否定し、逃げたのか。ついつい責めるような口調でヨシが言ってしまうと、ワクァはゆっくりと首を横に振った。

「確かにそうだと……俺は貴方達の息子だと……言えるわけがないだろう。相手はこの国の王と、后だ。仮に俺が本当の息子だと名乗り出れば……大変な事になる。村の農家で、生き別れになっていた親子が再会するのとはわけが違うんだ……」

政治的混乱、後継ぎ問題、クーデター、王族としての教育、派閥問題……予想される問題が、あっという間にヨシの脳裏を過ぎった。確かに、大ごとだ。国中が大混乱となり、下手をすれば多くの血が流れかねない。

「ワクァ……だから?」

「……」

ワクァは、答えない。ただひたすら、耐えるように俯いている。

「……これから、どうするの?」

せめて、何か喋らせようと。ヨシは質問を変えた。ワクァはゆらりと立ち上がり、「そうだな……」と呟いた。

「旅を続けても良いし……そうだ。ウルハ族の集落へまた行くのも良いかもしれないな……」

確かに、ウルハ族の族長ショホンは、ワクァがウルハ族に帰化するつもりであればいつでも歓迎すると言っていた。ウルハ族の子ども達も、ワクァに懐いている。本当にどうしようもなくなれば、それも一つの道だろう。

「けど……ワクァは本当に、それで良いの?」

「……」

ワクァは再び黙り込む。場は、またも沈黙によって支配された。今度こそ、この沈黙は破られないかもしれない。ヨシは、心のどこかでそう思った。だが。

「おうおう、何だぁ? 俺達に楯突こうってのかぁ?」

表の通りから、何やら喧騒が聞こえてきた。それも、何やら嫌な意味で香ばしい喧騒だ。しかも、どうにも聞こえてきた声に聞き覚えがある気がする。

「……ワクァ。私、ちょっと見てくるわ。絶対に逃げないでよね!」

しっかりと釘を刺すように言い。嫌な予感を覚えつつ、ヨシは通りへと足を向けた。





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