ガラクタ道中拾い旅










第五話 占者の館










STEP4 切っ掛けを拾う












先ほどの応援で全てだったのか、屋敷の中に人の姿は見当たらない。特に襲われる事も無く、三人は一階から全ての部屋を覗き、丹念に調べて行った。

だが、全ての部屋を見て回っても、イサマも、それ以外の人間も出てこない。証拠になりそうな物も、何一つ出て来なかった。

「ちょっと……これ、大丈夫よね?」

何も出てこない事に、ヨシが焦り始めた。黙ってはいるが、ワクァも内心焦っている様子だ。証拠もイサマも出てこないのでは、何をしに来たのかわからない。いかにも怪しい男達が外にいて、それらを警備兵が捕えてくれたために完全な不法侵入にならずに済むのが不幸中の幸いか。

「外の騒ぎに気付いて、逃げちゃったのかしら?」

「いや、玄関以外の全ての部屋は、窓も扉も内側から鍵がかかっていた。逃げられるはずはないんだが……」

難しい顔をして唸る二人の横で、ウトゥアがうーん……と呟きながら辺りを見渡した。そして一階に戻ると、またひと部屋ずつ入っては、床をコンコンと叩いている。

「? 何してるの、ウトゥアさん?」

ヨシの問いに、ウトゥアは「いや、何ね……」と言いながら床を叩き続けている。

「一階も二階も誰もいなくて、外に逃げた形跡も無いとなると……後は地下の隠し部屋、とかがセオリーだよねぇ」

「!」

目を見開いた二人の前で、ウトゥアは相変わらず床を叩きながら歌い出した。珍妙な節回しの、未来を占う歌だ。



美味しい物は台所

高品質のミルクに野菜

高級ワインにケーキもござい

されど一番美味しい物は

皿を並べた棚の奥



「皿を並べた……」

「棚の奥……?」

ウトゥアの歌が終わるや否や、ワクァとヨシは台所へと駆け込んだ。当たり前だが、食器棚はいくつもある。

そしてそのうちの一つが、少しだけ、壁から離れていた。よく見れば、床には最近動かしたような跡がある。しかも、棚と壁の隙間からは微かにではあるが風が吹いてくる。

「……!」

顔を見合わせ、二人は棚を動かした。中にあまり食器は入っていないようで、見た目によらず簡単に動く。そして、棚を動かしたそこには、ぽっかりと暗い穴が開いていた。手探りで入ってみれば、少し先に階段がある。

「ヨシ」

ワクァの声に、ヨシが黙って頷いた。鞄の中からランプを取り出し、火をつける。ランプの弱々しい光に照らされた階段を、ワクァとヨシ、それに二人を追ってきたウトゥアは慎重に降りていった。

降りて行った奥に、扉が見える。

「……行くぞ」

「いつでも!」

「私も、いつでも大丈夫だよ」

三人で頷き、ワクァは扉を開けた。






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