ガラクタ道中拾い旅
第四話 民族を識る民族
STEP6 旅の理由を拾う
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秋の匂いを含んだ風が髪を揺らす。軽く挨拶を交わして旅立った二人の後ろ姿を見送りながら、ショホンはリオンに話し掛けた。
「寂しいですか? また、娘さんが旅に出てしまって……」
「寂しさ半分、期待半分、ってトコだな。落ち着きの無さは相変わらずだったが、ヨシの奴、少しは前以外も見れるようになってんじゃねぇか。ちょっと前までは自分の目の前の相手と戦う事しか考えられてなかったのが、今じゃ戦場で誰がどこにいて何を使っているかを把握できるようになってた。他人の様子も気にかけれるようになってたみてぇだしな。旅をしてきたのも、無駄じゃなかったってワケだ」
そう言って、ニカッと人好きのする笑みを浮かべる。それにつられるように、ショホンもにこりと笑い返した。
「ところでよぉ、ショホン……」
ワクァ達の姿が完全に見えなくなってから、リオンはショホンに言った。
「ワクァの両親な。俺、心当たりがある気がするんだが」
「奇遇ですね。私にも心当たりがあるかもしれません」
互いに相手の言葉に驚く事も無く、誰もいない道の向こうを見続ける。
「どうして教えてやらなかったんだ? 人が悪いじゃねぇか」
「リオンさんこそ。ワクァさんの旅が終われば、その分早く娘さんが帰ってくるかもしれないと考えなかったのですか?」
「あー、その手があったか。けどな、俺の方はまだ確信が無ぇんだよ。一応大人だし、一族を預かる族長だからな。無責任な事は言えねぇだろ?」
「それを言ったら、私だってそうですよ。心当たりのある人物はいますが、彼らがワクァさんの両親だという確証は無い。ヘルブ国一の知識を蓄えた民族の名を背負う以上、その族長である私がいい加減な事を言うわけにはいきませんからね」
「そうだな。自分で苦労して行き着いた方が、感動もひとしおだろうしな」
「えぇ。それに、下手な情報を与えて先入観を持たせない方が良いかもしれません。思い込みほど怖い落とし穴はありませんからね」
そう言って、ショホンはそれから口を開こうとはしなかった。リオンもまた言葉を発する事無く、ショホンを促して集落の中へ戻っていった。
大人達の懸念など知る由も無く、ヨシとワクァ、そしてマフは歩き続ける。二人と一匹の頬を、涼しげな風が撫でていく。
季節は、秋に移ろうとしていた。
(第四話 了)