亡国の姫と老剣士





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「……ここ、だよね……?」

きょろきょろと辺りを見渡しながら、ティグは呟きました。見渡したところで辺り一面真っ暗なのですが、それでもそこには昔村があったという事がわかりました。屋根や壁の崩れた家が点々としています。壊れた柵の中には、きっと豚か鶏を飼っていたのでしょう。煉瓦を積んで造られた井戸の奥底からは、ひんやりと冷気が漂ってきます。人の気配は全くありませんが、それらの建物が、そこが村である事を教えてくれました。

「パルー? どこにいるの?」

ティグは、ためしにパルの名を呼んでみました。これで返事があれば、楽なものです。ですが、当然の如く返事はありませんでした。

ティグは肩をすくめて、村の奥へと足を踏み入れました。歩きながら、村の中を見て回ります。どの建物も、どこかしら崩れています。無事な建物は一つもありません。中には、跡形も無く崩れてしまっている家もありました。剥き出しの壊れた暖炉が、辛うじてそこに家があった事を示しています。

「この村に、一体何が起きたんだろう……」

思わず独り言を呟きながらも歩き続けます。そして、村の中央部にあたるらしい広場に出たところで、ティグは足を止めました。広場の向こうに見える少々大きめの建物から、明かりが漏れています。その明りに向かって、ティグは迷わず歩き始めました。そして建物の出入り口まで辿り着くと、まずは何と言おうか……と考えながら扉に手をかけました。




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