光と陰と蜃気楼―Tales of Mirage―





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世界は、一つだ。多くの人は、そう信じている。

だが、かつては世界がいくつもあると、全ての人が信じていた。

異邦への入り口は果てなき海や険しき山の頂にあるとされ、人々は時には手紙を火にくべ空へと昇る煙に想いを託し、時には願いを託した紙片を川へと流した。

美しい空は異界の住人からの贈り物であると喜び、激しい雷雨は異界からの宣戦布告であろうと恐れ慄いた。

そのように人々の生活は、常に目に見えぬ異界の民と共にあった。

しかし、いつしか人はそれを架空の物語であると思うようになった。

目に見えぬ異界の民を敬い恐れる者は無く、川や火に願いを託す神事はただの伝統行事へと姿を変えた。

こうして世界は、異界から切り離されていったのである……。





だけど、それで終わりでは面白くないと、私は思う。



だけど、それで終わりでは面白くないと、僕は思う。



だから、私は考える。



だから、僕は考える。



もしも異界が実在するのであれば、隅から隅まで調べて歩きたい、と。







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