平安陰陽騒龍記 第二章





















ごとごとと、獣ならざる音を立てながら、その獣は走っている。ざりざりという音と共に地面が削れ、がちがちとそこかしこで岩が鳴り、小石が弾け飛ぶ。

夜闇の中、ぼっ、という音がした。それと同時に、辺りが一息に明るくなる。

炎だ。

最初は小さく弱かった炎は、あっという間に燃え上がり、ぱちぱちという音と焦げくさい臭いをまき散らす。

木に宿っていた鳥達が、ぎゃあぎゃあと鳴きながら飛び立つ。鼠達は穴を掘って隠れ、兎や鹿達は全力で逃げ出した。

燃え盛る炎の中、熱くないのか、獣はただひたすらに、坂道を駆け降る。炎に怯え、足を止めるような事は無い。

ぶおぉぉぉぉ……という低い唸り声のような音が、取り囲む山々に木霊した。












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