葦原神祇譚













「夜末っ!?」

数十分後、戻ってきた瑛達の姿を見て、仁優は蒼ざめた。皆ボロボロで、無傷の者は一人もいない。瑛の顔色が悪い。オロシはオロオロとしながら「ごめんなさい、ごめんなさい」とひたすら繰り返し、泣いている。そして、瑛が肩を貸し引き摺るように連れてきた夜末は、誰よりも傷が酷く、ぐったりとしていて動かない。

「朝来! おい!?」

神谷が血相を変えて呼び掛けるが、返事は無い。

「意識が無い……仁優さん、早く朝来さんを医務室へ!」

「お、おう!」

要に言われ、我に返った仁優は瑛から夜末の身体を受け取った。その途端、緊張が途切れたのか、瑛がその場に頽れる。

「瑛!?」

「私は良い……早く行け!」

「けど……。……神谷、オロシ、瑛の事頼む!」

仁優の言葉に、神谷は黙って一回、オロシは目に涙を溜めてコクコクと二回頷いた。それを確認すると、仁優は夜末を背負って駆け出した。夜末から未だに流れ出ているらしい血が生温かく、反対に夜末の身体は冷たい。軽い身体にこれ以上無い重さを感じながら、仁優は医務室へと急いだ。





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