13月の狩人












10













「北の霊原に行こうと思うんだけど」

日付も変わった深夜。買い出しが済んだ後もすぐには安心せず、二人は辺りを警戒しながら歩き回った。

どうやら大丈夫そうだと確信してから、買い込んだ食料と共に再び廃棄用広場の荷車に隠れ、やっと干し肉のサンドイッチにありついてから、テレーゼは言った。

辺りは真っ暗で、流石に明かり無しでは何もできない。杖の先に蛍三匹分程度の灯りを灯し、それに助けられながらの夕食だ。

二つ目のサンドイッチに伸ばし掛けていた手をぴたりと止め、フォルカーがテレーゼの顔を見た。

「北の霊原? 何でまた?」

「簡単な事。このまま中央の街にいたら、遅かれ早かれ十三月の狩人に見付かるわ。その時に、街の中だと思う存分に戦えないでしょ? 同じ理由で、東の沃野も避けた方が良いわね。西の谷に戻れば、戦う事はできるかもしれないし、ダメ元で先生に相談もできるかもしれないけど……私達が獲物って事は、私達の家はきっと狩人に見張られてるわ。だとしたら、家に近付いただけで襲われるかもしれない。先生に相談するどころじゃなくなるわ」

そう考えると、最初に十三月を迎えてしまったと気付いた時、すぐにギーゼラに相談しなかった事が悔やまれる。あのまますぐに家を出ず、ギーゼラに相談していたら……ひょっとしたら、何か良い方法を教えてくれたかもしれないというのに。だが、今そんな事を悔やんだところで、後の祭りだ。

「……となると、行けるのは北の霊原か、南の砂漠か……たしかに、俺達の力量じゃ北の霊原以外に選択肢が無ぇな……」

南の砂漠は生物が生きていくのが過酷な環境であるだけに、生息しているモンスター達は非常に強い。十三月の狩人に襲われなくても、ここを歩いているだけで即座に死んでもおかしくない。それに、人が住んでいないという事は文明が無く、建造物なども無いと言う事だ。いざという時に隠れる場所が無い。

五つの地域を囲む山や海に行っても良いが、あまりに人里から離れてしまうのも生きていくのに不安がある。

二人の意見は一致した。まずは、北の霊原へ向かう。そう決めると、二人は残りのサンドイッチを口の中に押し込み、腹ごしらえを済ませた。そして、再び用心深く辺りの様子を窺うと、荷車の下から這い出て北へと足を向ける。

暗い夜道を、ただひたすら歩き始めた。必ず生き延びると、誓いあって。

氷響月が――一年が終わるまで、あと三十一日。











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