夢と魔法と現実と
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何だかんだで、何とか小説は完結できたわけで。俺は拙い文章をパソコンに打ち込み、プリントアウトした物を時野に見せた。勿論、作者は弥富だという嘘を貫いたままだ。
自分の書いた物を目の前で読まれるというのは、正直ドキドキするもんなんだな……例え自分の小説じゃないって相手が思い込んでたとしても。
「……あー……亮ちゃん、これは駄目だよ……」
残念そうな顔をしながら、時野が読み終わった小説を俺に渡してきた。……って言うか、あれ? 何か俺が書いたってバレてないか、これ?
「……そうか。どこがどうまずかった?」
あくまでも苦笑しながら、俺は時野に尋ねた。「駄目」と言われて、内心ではかなり凹んでいるけども。多分、今の俺はディネに囁かれた時よりもずっと負の感情を多く発生させていると思う。
……と言うか、本当にどこがまずかったんだ? いや、文章とか色々とまず過ぎるのはわかっているけども。けど、この小説……登場人物とその描写、出来事はほぼ事実そのままだ。その辺を突っ込まれたら、正直言って修正のしようが無い。
そんな事で内心悩む俺に、時野は難しそうな顔をして言う。
「……いや、俺はこれでも別に良いんだけどさ。可愛い女の子が一瞬しか出てこないんじゃ、このテの話は市場で売れねぇよ?」
……どうしろって言うんだ。
(了)