夢と魔法と現実と
22
小さい頃から、ヒーロー物の特撮やアニメが大好きだった。それで、いつかああなりたいと思うようになった。ヒーローになって変身して、街を悪い奴らから守って。大きくなってからも、それは変わらなくて。変わったのは、ヒーローよりも司令官の方が色々と美味しくて良いかもと思うようになったぐらい。
更に本を読むようになって、ゲームもするようになって……ファンタジーの世界に憧れるようにもなった。いつか、俺もあんな世界で冒険してみたい。剣を振るって、魔法を唱えて、仲間達とモンスターを倒して……。
小学生のうちは、クラスの友達も「面白そうだ」とか「じゃあ俺をレッドに任命してくれよ」とか……一緒に夢見てくれていた。
けど、中学生になり、高校生になり……次第に皆、「そんな事は無理だ」と言うようになった。
「地球を侵略しようとする異星人なんていない」「ファンタジー世界なんて存在しない」「秘められた力? そんな物あるワケないだろ」
そうして、いつの間にかヒーローや冒険を夢見ているのは俺一人だけになっていた。
……それだけじゃない。皆俺に、「早いところ目を覚ませ」と言う。目を覚まして、まっとうに生きろと。
俺に、夢を捨てろと言う。
……わかってるさ。本当はわかってる。
少なくとも、今現在地球に近付いてる知的生命体はいないし、人類の科学は人間を変身させて更に強くするなんてところまで進化してはいない。魔法もファンタジーな異世界も、存在は証明されていない。
詰まるところ、俺の夢が叶う可能性はゼロに近い。……と言うか、ほぼゼロだ。
けど、諦めたくは無い。今ここで夢を諦めたら、今まで積み上げてきた何かが崩れてしまう。その反面、周りが醒めている中一人だけ現実的じゃない夢を追い続けるのも疲れると思う時があるのも否めない。
夢と楽に挟まれ続けるのは、辛い。いっそ夢半ばで事故か何かで死んじまった方が色々な意味で楽なんじゃないかと思えてしまうほどに。
そんな事を考えながらスーパーを巡っていたら、どこからか声が聞こえてきた。誰の声かはわからないけれど。
「仕方が無いね。ここまできたら、もう修正は不可能だ。やり直すしかないよ、一からね」