龍士守護旅







赤々と空が染まっている。ごうごうという音が渦巻いている。

炎だ。

巨大な炎がうねり、唸りながら燃え盛っている。

赤く染まった空の下、炎の足元に、瓦礫の山が見える。元は、家だった物だ。そして、その様を呆然と見詰めている少年が二人。一人は十歳ぐらい。もう一人は、その半分ぐらいの年齢のように見える。

「……父さん……母さん……」

炎を見詰めながら、大きい方の少年がぽつりと声をもらした。だが、その声に返事をする者は無い。

少年は、ギリ……と歯を噛み締めた。

「畜生……」

噛み締めた歯の隙間から、嗚咽と共に声があふれ出る。

「畜生ぉぉぉっ!!」

少年は、天を仰いで叫んだ。喉が裂けるのも構わないと言わんばかりに、ありったけの力を込めて。

だが、そんな少年の叫び声すらも、炎の唸り声はいとも容易く掻き消した。

炎は、少年から多くの物を奪い去り、数日後に消え去った。その頃の少年にはもう、叫ぶ事で紛らわせる悔しさも悲しさも、残っていなかった。

少年に残されたのは、自分の半分しか生きていない少年と、健康な身体。そして……。




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