陰陽Gメン警戒中!




















天津栗栖が万引きGメンとして音妙堂書店に雇われてから、早一ヶ月。

店内に、甲高い悲鳴が響き渡った。

ギョッとする客、何事かと声のした方へ足を向ける客、連れと不安げに言葉を交わす客、面倒な事に巻き込まれる前にと言わんばかりにそそくさと帰っていく客。一口に客と言っても、反応は様々だ。

そして、スタッフもまた、一口にスタッフと言っても反応は……。

「本木さん、コミックコーナーで、まぁた馬鹿が湧いたみたいですけど」

「そうみたいだね。……で? 俺にどうしろと?」

「これからまた、天津君と店長が犯人に何かトラウマ植え付けようとして、一波乱あるんでしょ? 余計な仕事増やさないように、早く天津君の口、塞いできてくださいよ」

「何で俺? 俺、今から文庫の補充したいんだけど」

「いや、だって天津君の教育係って本木さんですし。文庫の補充なら俺らでやっときますから」

「……新人の教育って、皆で協力し合ってやる物じゃなかったっけ?」

「そうかもしれませんけど、とりあえず責任者はチーフでしょ」

「責任者は店長だよ……」

「本木さん! 男性同士の純粋な恋愛をアダルティに描いた本を重点的に陳列しているコーナーで、万引き犯一名様捕獲しましたーっ!」

がっくりと肩を落とす暦の心情なぞ知る由も無く、嬉しそうな顔をして栗栖が女子高生を引っ張ってきた。捕獲場所の詳細な報告とその声の大きさに、犯人の女子高生はぎゃああぁぁぁ! と断末魔のような叫び声を発している。

「天津君、トラウマ植え付け作業はもう諦めたけど、やるならせめてバックヤードに入ってから! あと、声が大きい!」

既に客達がこちらをまじまじと見詰めている。これだけでも、精神的ダメージは中々の物だ。ましてや、栗栖に捕獲された万引き少女の心中はいかばかりか……。流石に、同情せざるを得ない。許しはしないが。

何故注意されたのかわからない、という顔をしている栗栖の額を拳で軽く小突き、ため息をついて暦はバックヤードを指差す。

「とにかく、まずはバックヤードに入ってもらって。身元確認して、警察呼んで、さっさと終わらせちゃおう。何がいけなかったか、その後で指導するから」

「? はい」

首を傾げながらも、栗栖は女子高生をバックヤードに連行していく。再びため息をついてから、暦は女性アルバイトの二川に同席を促した。女性の万引き犯を相手にするなら、女性が同席していないと後々面倒な事になりかねない。

白羽の矢を立てられたことに不服そうな顔をしつつ、二川もバックヤードに続いていく。残る二人の男性アルバイトに後を任せ、暦もまた、バックヤードへと姿を消した。









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