贄ノ学ビ舎














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「……明瑠さん……」

「……」

「明瑠さん、済みません……。私が……私が、父に明瑠さんの事を教えたりしなければ、明瑠さんが生贄に選ばれる事なんて無かったのに……」

「……」

「あの……私、明瑠さんがあの毒薬を隠した場所だけは、父に教えませんでした。その……何か、教えちゃいけない気が、して……」

「……」

「済みません、明瑠さん……済みません……」

「……知襲ちゃん」

「……はい」

「私がね、あの地下校舎へ行ったのは……女の子の泣き声が気になるからだった。これは、前に言ったよね?」

「……はい」

「きっと、知襲ちゃんが泣いている事を気にかけてくれる人は、私以外にもいるよ。その人はきっと、自らの意思であれ、どうであれ、きっと知襲ちゃんの前に現れる。だから、その時は……今度は、全力でその人の事、助けてあげてね」

「……」

「……さぁ、そろそろ儀式が始まる時間だから。介添人すら追っ払って独りで長時間籠ってる、なんて、怪しまれるからね。知襲ちゃんと話せるのは、残念だけど、これでおしまい」

「明瑠さん、私……」

「知襲ちゃん」

「……はい」

「……ごめんね。私、物事を理屈で考え過ぎてた。理屈だけで考えて、知襲ちゃんの気持ちとか、考えてなかった。……ごめんね」

「明瑠さん、それは……」

「あ、もう本当に時間が無いみたい。……それじゃあね、知襲ちゃん」

「明瑠さん! ごめんなさい……ごめんなさい……!」

「大丈夫、ちゃんと伝わったよ。堂上さんも、怒ってないから」

「……柳沼くん……?」

「生贄の儀の時、テレビに映った堂上さんは……どこか誇らしげな顔をしていたよ。今思えば、あれ、知襲と会えたから、あんな顔ができたんだよね」

「え……?」

「知襲と会った事で、堂上さんはアダムの細胞を手に入れる機会に恵まれた。それのお陰で、アダム細胞破壊毒を精製する事ができた。そして、その唯一の隠し場所を知る知襲は、誰にもそれを教えなかった」

「……」

「自分の作ったその毒薬を、そのうち知襲が地下校舎に導き入れた誰かが使って、化け物達を倒してくれるかもしれない。生贄の儀を終わらせる切っかけになってくれるかもしれない。自分はここで命を落とすけど、自分の作り出した毒薬がいずれは人々を救う。だから、あんな誇らしげな顔をして、堂々と生贄になる事ができたんだよ、堂上さん……」

「そう……なんでしょうか……?」

「そうだよ。……確かに、知襲は堂上さんを生贄にする切っかけを作ってしまったかもしれない。全国に散らばり、人々を苦しめている化け物の母親なのかもしれない」

「……」

「けど、知襲がいなければ、堂上さんがあの毒薬を創る事はできなかった。そもそも、知襲だって最初はただ白羽理事長の計画を知ってしまったために生贄にされてしまった犠牲者だったんじゃないか。なら、化け物の母親になってしまったのは、知襲のせいじゃない。誰かが、なっていた事なんだ」

「……」

「知襲は、堂上さんを地下校舎に招いた事で、たくさんの人を助けた事になるんだよ。そんな知襲を、堂上さんは怒ってないよ。絶対に」

「柳沼くん……」

「……ん?」

「ありがとう、ございます」

「……何て事無いよ。知襲が、理科室で俺の事を励ましてくれた時に比べたらさ」

「いいえ……本当に、ありがとうございます。……奉理くん……」











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