銀河混沌冒険団























 操舵室の説明は、本気でワケがわからなかった。英語や数学の時間を思い出すぐらいに、何を言われているのかすらわからない。

 何とか非常時に乗る脱出ポッドの使い方と、緊急時にバリアを張る方法だけは頭に叩き込んだが、方向転換だとかビームの打ち方だとか、その他諸々の操作は何が何だかさっぱりだ。

「とにかく、身を守る方法さえ身に付けば、まずはそれで良し、ですよ。操舵に関してはこれぐらいにして、次は生活に関わる操作の方を教えますね」

 そう言われて、気持ちを切り替えキッチンで自動クッキングマシンだの風呂だのの使い方を教わっていた時だ。

 突然、大きな衝撃が俺達を襲った。

 まるで地震のような……いや、宇宙だから、地震じゃない。なら、何かにぶつかった? 例えば……えぇっと、何だっけ……そう、スペースデブリとか、衛星とか、そんなのが船の側面を掠ったとか。

 状況を確認しようと、俺は窓へと駆け寄り外を見る。そして俺は……目を見開いた。

 そこに、船がいた。この船の大きさを知らないので、こちらに比べて大きいのか小さいのかよくわからないが、さっきの衝撃の大きさから考えると向こうはこちらと同じぐらいか、こちらよりも大きいかぐらいだろう。

 けたたましいサイレンが、船内に鳴り響き始めた。赤いランプがテカテカと光っている。科学が進歩していても、こういうところは変わらないんだな、と頭のどこかで考えた。

「ショウ、私を急いで、さっきの操舵室に連れていってくれませんか? 早く迎撃態勢を整えませんと!」

「迎撃って……あの船をか? あれは一体……」

 ピューレを肩に載せながら問うと、ピューレは少しだけ考えてから、こう言った。

「こう言うのが、ショウには伝わりやすいでしょうか。一言で言うなら、宇宙海賊、です」

「……すっごくわかりやすかった」

 何もかもが疑問だらけなこの環境で、たった一言でここまでわかりやすい説明をされるとは思わなかった。

「えぇっと、つまりあっちの目的は、この船の乗っ取りとか、食料や貴重品の略奪、ついでに商品としての乗組員の捕獲、とか思っておけば良いのか……?」

「そうなりますね」

 言葉を交わしながら操舵室に急ぎ、操縦席にピューレを座らせる……と言うか、置いた。

 すると、ピューレは体の一部を何本もの触手のように伸ばして、もの凄い勢いで操縦席のパネルを操作し始めた。一見すると千手観音のようなその様子に、俺は思わず息を呑む。

「クルル、ミル! 船の防御準備は完了しました! いつ出て頂いても構いません!」

『了解!』

『オッケー! わかったよー!』

 スピーカーから、二人の声が聞こえてくる。どうやら、今現在こちらで話した事は全てクルルとミルに聞こえるらしい、という事は、ピューレの様子を見ていて何となく理解した。映画やアニメでもよく見るし、このシステムにはそれほど困惑しない。

 目の前の大きなモニターに、この船のカタパルトデッキらしき物が映し出された。そこに、小さな人影が二つ出てくる。クルルとミルだ。

 このモニター、かなりの高解像度らしい。デッキに堂々と立つ二人の表情も、服の皺まではっきりと見える。……ん? 表情と服の皺?

「え、待てよ。なんで二人とも宇宙服とか着てねぇの? ある程度似ている種族同士でしか仲間に誘ってないって事は、あいつらも俺と似たような体の構造してるって事だよな? 酸素は? 防護服は? 無重力の心配は?」

『進歩した科学をナメるなよ、旧人類』

『今の時代はね、生まれた時から色々なパーツを体に組み込んでるから、ほとんどの星のほとんどの知的生命体が、宇宙空間でも普段通りに動く事ができるんだよ。あ、勿論ある程度無重力の影響は受けるから、いつもより体が軽くなって跳び過ぎちゃたりする事はあるけどね』

 都合が良過ぎると言うべきか、千年後の科学力すげぇと言うべきか。

『そんな事よりも、ボク達の雄姿、しっかりその目に焼き付けといてよね!』

「へ? 雄姿? それってどういう……」

「どういうも何も、今からこの船を狙って襲い掛かってくるであろう宇宙海賊を、クルルとミルの二人が追い払うんですよ。ああ見えてあのお二人、かなり強いんですよ?」

 ピューレがそう言う横で、モニターに映し出されたクルルとミルは不敵に笑っている。戦闘目前で高揚している顔、とでも言うべきか。

『まったくさぁ。この船を狙うなんて、良い度胸してるよね。それとも、よっぽど情報収集能力が不足しているのか……どっちだろうね?』

『さぁな……どっちでも良いさ』

 そう言って、クルルは腰から、警棒のような物を取り出した。一振りすると、それはあっという間に変形していき、最終的にはゴツい武器へと姿を変える。……ゴツい武器、と言うと、範囲が広過ぎるかもしれない。あれは……そう、アックスだ。あの斧と言うか、ゲームとかで海賊がよく持っている武器。……どっちが海賊なんだか。

 そのアックスを一振りして肩に背負うと、クルルは不敵な笑みを崩さないまま唇を少しだけ舐めて。そして、言った。

『どっちだろうと、完膚なきまでに叩きのめして追い払うだけだ!』











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