ガラクタ道中拾い旅
第九話 刀剣の国
STEP1 よく似た少女を拾う
2
てくてくと、ワクァ達は森の中を歩いている。鳥の囀りを遠くに聞きながら、トゥモが地図を確認した。目の前に、二つに分かれた道がある。
「えぇっと……こっちの道で良いんスよね? フォルコ様?」
「いや、そちらへ行くと、別の国に向かってしまう。テア国に入る道はこちらだ」
右の道を指差したトゥモに首を振り、フォルコは左の道へと入っていく。がくりと項垂れたトゥモの後で、ワクァとヨシが苦笑した。
「トゥモ……何回目だ?」
「これで通算、八回目っス……。実際に歩いて覚えた道なら、絶対に間違えないんスけど……」
元々ドジが顕著であったトゥモだが、地図を読むのも苦手であるようだ。
「これで、橋の無い川があったら悲惨かもしれないわね、トゥモくん……」
「あぁ、落ちるな。……間違い無く」
既に何度も落ちている様子を目の当たりにしているワクァは、迷い無く頷いた。そんな二人に、トゥモは「酷いっス!」と悲鳴をあげる。
「殿下。ヨシ殿に、トゥモも。そうやってはしゃいでいると、三人まとめて川に落ちるかもしれませぬぞ。……と言うよりも、あまりに度が過ぎるようなら、まとめてそこの川に叩き落として差し上げるが」
フォルコの厳しい言葉に、三人はギシリと顔を強張らせる。そして、すぐに苦笑して表情を緩めた。
「何か、ついついはしゃいじゃうのよねぇ。旅をするのが久しぶりだからかしら?」
「だろうな。……不思議なものだな。俺がヨシと旅をしていたのはたった半年かそこらだったというのに……三ヶ月ぶりに旅をしているというだけで、ここまで気分が高揚するとは思わなかった」
「それだけ、ヨシさんとの旅で得る物が多くて大きかったって事じゃないっスか?」
トゥモの言葉に、ワクァはもう一度「だろうな」と言って緩く笑った。普段あまり笑う事の無い彼の笑みに、ヨシとトゥモの顔も思わず緩む。
笑いあう三人に、フォルコも思わず微笑んだ。だが、すぐにその表情を引き締める。
「平和を満喫するのも結構。ですが、あまり気を抜き過ぎませぬように。今の殿下達の成すべき事、よもやお忘れではありますまい?」
フォルコの言葉に、三人は表情を引き締めて頷いた。そしてワクァは、己の荷物に収められた、銀色の細長い箱の様子を思い出す。ヘルブ国王から隣国であるテア国の王へと送られる、親書が収められた箱だ。
「テア国か……」
「どんな国なのかしらね?」
「自分……まさか隣国へ親書を届ける一行に加わる日が来るなんて、兵士になった時には思ってもいなかったっス!」
特に緊張した様子は無く、三人の足取りは軽い。その様子に安堵のため息と苦笑の両方を漏らしながら、フォルコは黙々と前に進む。歩きながら、ウトゥアの口にした言葉の意味を考えていた。