ガラクタ道中拾い旅










第二話 守人の少年(モリビトノショウネン)











STEP1 小瓶と宿を拾う











さんさんと輝いていた太陽がゆっくりと下降線を描き始めたある夏の午後。特に目を引くような物は見当たらない極ありふれた道のど真ん中で、一人の旅人が蹲っていた。その旅人の少女は、赤茶色のコートが汚れるのも構わずに、ライオンの鬣色をした三玉しかないみつあみをピョコピョコと踊らせながら懸命に地面を掘り続けている。その手にはそこらで適当に拾ったのであろう木片が握られており、それをスコップ代わりにサクサクと動かしながら、少女は大きな溜息をついた。

「あ〜あ! 王様が「占い師が「ヘルブの民が拾い集めた宝をよくよく検分すれば、国の行く末は安泰である」と言ったので、ヘルブ街の住人で手隙の者は宝を集めに行け。旅の途中でこれぞ宝であると言える物を拾い献上した者には褒美を与える」なーんてお触れを出してから早七ヶ月……どうせ占うなら、いつからいつの間に見付かった宝なのか、って期限まで教えてくれれば良いのに……神様もいい加減な仕事してるわよね〜」

「特に異議は唱えないが……神様もお前にだけは言われたくないだろうな、ヨシ」

王様の台詞の部分でわざわざ表情と声色を変える無駄に芸達者な一面を見せたヨシという名のこの少女に、傍らで穴掘りを呆れ顔で見物していた旅の同行者である少年は言った。その言葉にムッとしたのか、ヨシは動きを止めて反論する。

「……何でよ?」

ヨシの言葉に、少年は我慢も限界、と言わんばかりに顔を引き攣らせ、半ば叫ぶように答えた。

「お前がいい加減じゃなかったら、この世にいい加減な奴なんか存在しないだろうが!」

「失礼ね〜。私、別にいい加減なんかじゃないわよ、ワクァ!」

ヨシが膨れっ面をこしらえて噛み付くように言うと、ワクァと呼ばれた少年は形の良い眉とミッドナイトブルーで切れ長の目をキッと吊り上げて言葉を並べた。その拳は、今にも殴りかかりたそうな勢いで小刻みに震えている。

「……なら、ここ二日ほどのお前の行動を思い返してみろ! 布の劣化した熊のぬいぐるみ! 湖に浮かんでいた所為で水死体と間違えかけたカツラ! お前には不要であろう他国の飾り! どう考えても国の行く末とはまるで無関係な物を「宝かもしれない」とか言って無計画に拾い続ける奴の、どこがいい加減じゃないんだ!? どこが!?」

そう言って、ワクァはヨシが肩にかけている鞄を指差した。瓢箪のようにくびれた形でウコン色の、どう見てもセンスが良いとは言えないヨシのこの鞄には、今までの旅でヨシが拾い続けてきたゴミ、もしくはガラクタとしか言いようの無い物が多種多様大量に詰まっていた。その中でも特に最近加わった、黒い長髪のはっきり言って気色悪いとしか言えないようなカツラや、何処かのクソガキが要らなくなって捨てたと思わしき劣化した熊のぬいぐるみ、旅人にとっては用途に困るかんざし等を具体的に挙げながら、ワクァはヨシのこれ以上の意味不明な拾い物をやめさせようと、必死で怒ってみた。

だが、一秒後にはそれが完全に無駄な努力であったと判明する。

「な〜に言ってんのよ。世界に私ほどいい加減じゃない人間なんていないと思うけど? あ、マフ、ちょっとここ掘るの手伝ってくれる?」

ワクァの言葉をさらりと受け流すと、ヨシは傍らに控えていたパンダイヌ――身体つきや模様はパンダだが、顔の骨格は犬の姿をした動物。雑食性で、何でも食べる――のマフに声をかけた。マフは「任せてください!」とでも言わんばかりに「まふ!」と鳴くと、そのままヨシの掘っている場所を二本の前足で掘り出した。

その様を見て、ワクァは額に青筋を立てながらも、懸命に怒りを堪えようとしながら言った。

「世界中のお前よりいい加減じゃない人間に今すぐ謝れ。動物に穴掘りを手伝わせる人間がいい加減じゃないなんて、俺は認めないからな」

「はいはい。あ、ワクァは反対側から掘ってね」

この人の話を全く聞いていない風なヨシの態度に、遂にワクァがキレた。頭上からは、ぶちん、という何かが切れるような音がしたかもしれない。

「いい加減にしろーっ!!」

普段滅多に発される事のないワクァの怒鳴り声に驚いたのか、ヨシは掘りかけていたものを引っつかんだ状態で、思わず尻餅をついた。その拍子に、埋まっていたものがすぽん、と抜ける。

「あ」

あまりにアッサリと抜けたその様を見て、思わずワクァとヨシは同時に声をあげた。二人揃って唖然としていたが、そこは持ち前の性格でワクァよりも早く我に返ると、ヨシは興奮気味の嬉しそうな顔で言った。

「すっごい! 抜けたわよ! さっすがワクァ! 自らの手を汚す事無くツッコミだけで地面に大きなカブの如く埋まっていた物をアッサリ引っこ抜くなんて、並大抵のツッコミ担当芸人にはできないわよ!?」

「人聞きの悪い部分を強調するな! それよりも……結局何を掘り出したんだ?」

自らの手を汚す事無く、という人聞きの悪い台詞に力を込めたヨシの発言に機嫌を損ねつつも、流石にヨシの掘り出した物が何なのか気になったのか……ワクァは先ほどまでの怒気を少々納めながら訊ねた。それに、ヨシは満足そうな笑顔で答える。

「これ」

その手には、どう見ても使えなさそうなガラスの小瓶。全長十pほどでコルクの栓が口に詰まった可愛いデザインで、中には星の砂がギッシリと詰まっている。それを見た瞬間にワクァは途方も無い脱力感に襲われた。がっくりと肩を落とし大きく溜息をつくと、何でも良いから早くこの話題を終わらせようとするかのようにヨシに言った。

「……もう良いだろう? 目当ての物は掘り出せたんだ。もうじき日も暮れる……さっさと街へ行くぞ」

「はい、はい。本当にせっかちなんだから、ワクァは。そりゃあ、あんまり遅くなっちゃうと泊めてくれる宿屋も無くなって野宿になっちゃうかもしれないけど……でも、今の時期なら虫に刺される事はあっても凍死する心配は無いし。もうちょっとゆっくりしても良いんじゃない?」

掘り出したばかりの小瓶をウコン色の鞄に入れながら、ヨシは呆れたような口調でワクァに言う。すると、再度溜息をつきながらワクァは辺りを見渡した。

「確かに凍死の心配は無いだろうな……だが、野宿で心配なのはそれだけじゃないだろう? 野生の動物に襲われるかもしれないし、それに……!」

「!」

瞬時に、ワクァとヨシの表情が引き締まった。警戒するように背中を合わせ、ワクァは腰に手を当てる。二人とも何かの気配を感じたのだ。それも、ただの気配ではない。明らかに殺気を含んだ、自分達にとってはあまり好ましくない気配だ。マフもそれに気付いたのか、近くの茂みに向かって唸り始めた。

やがて茂みがガサガサと鳴り始め、数秒後にはがたいの良い男が三人ほど飛び出してきた。全員が布で口元や顔を隠すように覆面し、手にはナイフや剣を所持している。目付きが悪く、どいつもこいつも典型的な盗賊、もしくは強盗スタイルだ。

三人は手の武器を見せ付けるようにしながら道を塞ぐと、ガラガラした声で脅すように怒鳴った。

「オラ! 止まれ!」

「命が惜しけりゃ、大人しくしな!」

「そうそう! それで、金目の物をありったけ出してもらおうか!」

ワクァもヨシも、最初から止まっているとか、別に暴れてはいないとか、そんな無粋なツッコミはしない。ただ、ワクァは心底面倒臭そうな顔で深い溜息をつくと、先ほどの言葉に繋がるように呟いた。

「……こういう奴らに絡まれたりするからな……」

「……納得。こりゃ面倒臭いわ」

言われて、ヨシもまた面倒臭そうに溜息をつくと肩をすくめ、両腕を半分だけ上げて「やってらんねぇ」のポーズをとった。そんな動じない子供と言っても通じるような若者二人を目の当たりにし、三人の盗賊男達は面食らった顔で問い掛けるように叫んだ。

「なっ……何でそんなに冷静なんだ、お前ら!」

「俺達は盗賊だぞ!? 恐くねぇのか!?」

思いがけない獲物の態度に、微妙に声が上ずっている。そんな男達の態度を見ると、ヨシは更に萎えたような、詰まらなそうな顔をして、横にいるワクァに愚痴るように呟いた。

「……ワクァ、こいつら初心者っぽいわ。不測の事態への対応がまるでできてないもの」

その呆れ返ったヨシの台詞にカチンときたのだろうか。男達は額に青筋を浮かべると、強面を更に凶悪に歪めて反論の言葉を口にした。

「しょっ……初心者だぁ!?」

「ナメんなよ、小娘! 俺達はこれでもう十年は飯を食ってきているんだぞ!」

……が、所詮怒りに任せただけの言葉でヨシを怯ませる事ができる筈もなかった。彼女は大袈裟に驚いた顔を作ると、わざとなのか本気なのか判別しかねる驚愕の声音で盗賊達に問うた。

「十年もやっててそんなにアドリブ下手なわけ!? 今までよく役人に捕まらなかったわねぇ……あ、ひょっとして、悪運だけは物凄く強い集団?」

「何だと!?」

ヨシの言葉に堪忍袋の緒が切れたのか、男達は手に手に短剣を引き抜き、襲い掛かる構えを取った。それを見て取ったワクァは腰の愛剣――刃渡り八十p程のバスタードソード――リラに手をかけ、一歩分だけ前に進み出た。落ち着いているが、その瞳は既に臨戦態勢に入っている。

「初心者だろうと上級者だろうと……小者である事に変わりは無いだろう。そこをどけ」

相手が退こうが戦闘になろうが構わない。言外にそう語るワクァの口調に、盗賊達は更に怒りを募らせたのか……ワクァに詰め寄ると、どすの利いた声で怒鳴りかかった。

「んだとぉ、この小娘が! 美人だから何言っても良いと思ったら大間違いだぞ!」

その瞬間、ワクァの眉がピクリと動き、そのまま顔に不機嫌そうな陰を落とした。それと同時に、ヨシはその様子を見てプッと噴き出している。

「誰が……小娘だと……?」

ワクァの声が明らかに不機嫌全開になっている。だが、地雷を踏んだ事に全く気付いていない盗賊達は下卑た顔をニヤつかせながらワクァの髪を掴んで顔を上に向かせた。

「お前だよ、お前。けど、残念だったなぁ、小娘。どんなに美人で良い女でも、俺達ジャンガル盗賊団は……」

そこまで言って、男は言葉を途切らせた。呟くような、普段より一オクターブは低いであろうワクァの声が聞こえたからだ。

「……れが……」

「?」

聞き取れない言葉に、盗賊達は怪訝そうな顔をした。そして次の瞬間、爆弾が爆発する事となる。

「誰が小娘だっ! 俺は男だ!!」

彼の容姿からは少々想像しがたい怒鳴り声に、盗賊達は「信じられない」という顔を露にした。ワクァの髪を掴んでいた男は思わず髪を手放して後退り、他の二人もぽかんと口を開けて唖然としている。その様子を見て、ただ一人渦中に無いヨシはクックと笑いを殺しながら、窘めるようにワクァに言う。

「怒っても仕方ないわよ、ワクァ。何度も言った事だけど、ワクァって男にしては女顔だし、それより何より美人過ぎるもの」

言われて、露骨に不機嫌な顔になりながらワクァは怒りの矛先をヨシに向ける。

「黙れ。女顔と言うなと、何度言ったら……」

わかるんだ、と言おうとした瞬間だ。

「お待ちなさいっ!」

ヨシよりも更に高い少女の声が、辺りに鋭く響き渡った。一瞬の間を置いてヨシとワクァは振り返り、盗賊達はワクァ達の後ろを覗き込むように見る。

そこには、二人の子供が立っていた。一人はプラチナブロンドのストレートヘアを肩まで伸ばした、如何にも良家の箱入り娘と言った感じの少女。。通常のものより二十pは裾が短いであろう薄ピンクのドレスに、頭の赤いリボンが可愛らしい。年の頃は十四、五歳、といったところだろうか。明るく大きなターコイズブルーの瞳が、しっかりと前を見据えている

もう一人は、少女よりも更に三つか四つは下であろう少年。短く刈られたアッシュブロンドの髪が活発そうな印象を与えるが、丸い琥珀色の瞳に茶色を基調とした服装が穏やかそうな雰囲気を醸し出している。

少女は手に木剣を携えて威風堂々と立ち、少年は剣を抱えて緊張気味の面持ちで少女の横に立っている。少年の持つ剣は全長百p程度、刀身は七十p程だろうか。この年頃の子供が持つには大き過ぎる大剣、クレイモアーだ。もっとも、ワクァのリラだってワクァの身長を考えれば少々長過ぎるきらいがあるので、本人が使い良いのであればそれで良いのだろうが。

この闖入者に唖然としつつも、盗賊達の一人は少女に問うた。声は、少々呆れている。

「……何だ、お前らは?」

すると、少女は愛らしくも凛とした声で盗賊達を見据え、はっきりとした口調で物を言った。

「先ほどから様子を窺っていれば、か弱い女子二人を何人もの男が囲むなど……卑怯で臆病な事、この上ありませんわ!」

少女がビシィッ! と盗賊達に人差し指を指し、少年はその横で同意するようにコクコクと慌てて頷いた。先ほどって一体いつからこの場にいたんだ、何人ものと言っても二人を三人で囲むのであればそんなに多いようにも思えないんだが、等などツッこみたい事は山ほどある。が、とりあえず少女の「か弱い女子二人」という言葉に反応してワクァは慌てて訂正しようと口を開いた。

「待て、誰が女子だと……」

だが、そんなワクァの抗議は一切聞こえていないらしい少女は片手で木剣を構えると、まるで芝居の決め台詞を言うかのように盗賊達に向かって叫んだ。

「この世に悪が栄えた例(ためし)無し! 心弱き者は心強き者に敗れるが道理! わたくし、ファルゥ=マロウと彼、シグが成敗して差し上げますから、自らの蛮行を悔いた上でお覚悟あそばせ! さぁ、いきますわよ、シグ!!」

「はっ……はい! ファルゥ様!!」

ファルゥという名前らしい少女が声をかけると、彼女にシグと呼ばれた少年は上ずった声ながら返事をし、ファルゥと同じように剣を構えた。二人揃って思い切りよく地を蹴ると、盗賊達に向かって果敢に突っ込んでいく。

「たぁぁぁぁっ!!」

掛け声と共に二人揃って剣を打ち下ろし、盗賊達は短剣でそれを受け止める。シグの剣と盗賊の短剣がぶつかり合う金属音が、辺りに響いた。

その様子を見て、すっかり蚊帳の外に追い出されてしまったワクァは脱力し、呆れるように呟いた。

「……何なんだ……」

それに返すように傍観を決め込んでマフを頭に乗せつつしゃがみ込んだヨシが気楽そうに言った。

「さぁね〜。まぁ、良いんじゃない? 少なくとも、私達の敵じゃないみたいだし。このままあいつらを倒してくれれば、私達は手を汚さずに済むし。一石二鳥って事で」

「だから、嫌な部分を強調するな……」

わざとらしく「手を汚さずに済む」とのたまうヨシに、合いの手を入れる程度にワクァがツッこんだ。彼もまた傍観者に回ることを決めたらしく、木にもたれ掛かって事の成り行きを見守っている。そんなワクァに、ヨシが軽く今夜の献立を確認するような口調で訊ねた。

「ところでさぁ、ワクァ? ワクァの剣術レベルって、王国騎士団総団長クラス、もしくはそれ以上よね?」

ヨシの言葉に、ワクァは視線を眼前の戦闘から外し、少しだけ考えた。そして、表情も変えずにさらりと言う。

「王国騎士団総団長クラスの奴と戦った事が無いから、肯定も否定もできないな。仮にそうだとしたら、何だ?」

謙遜する事も尊大な態度を取る事も無い相棒に満足そうにニヤリと笑いつつ、ヨシは問うた。その視線は、ファルゥとシグに向っている。

「それだけ剣のレベルが高いワクァから見て、あの子達の剣術レベルはどう? 勝てそう?」

問われて、ワクァはちらりと視線を少女達に戻した。戦闘の様子を見れば、シグという少年は相手の攻撃をちゃんと受けているし、振り下ろした剣の軌道もしっかりしている。基本的な型はできているという感じだ。そこそこ様になっていると言えるだろう。だが、先に突っ込んだファルゥという少女は……はっきり言って滅茶苦茶だ。木剣はただ振り回しているだけだし、踏み込みも甘過ぎる。どう見ても子供の剣術ごっこレベルで、盗賊達もまともに相手にしていない。子供の遊び相手をする感覚で、適当にいなしていると見て良いだろう。

それだけを確認すると、ワクァは視線は動かさないままヨシに答えた。

「そうだな……あの小さい方は年頃の割りに強いとは思うが……今勝てるかどうかとなると……」

そう言う間にも、ファルゥとシグはどんどん追い詰められていく。そもそも、腕力で確実に劣る子供が真正面から何の策も立てずに大人に勝負を挑むという事がどだい無理な話だ。

「まぁ、無理だろうな」

「…………」

そう、ワクァは正直な感想を述べた。さらりと言ってのける彼に、ヨシは曖昧な笑顔のまま戦闘を見守り続ける。しゃがみ込んだまま腰を上げる様子は無い。そんな彼女達の前では、追い詰められたファルゥが、彼女を守るようにギリギリの線で奮戦しているシグを叱咤激励している。

「何をやっていますの、シグ!? これも修行ですわよ! 念じるのです! 貴方が彼らに勝つ姿を想像し、必ずやその通りになると強く念じるのです! そうすれば、おのずと勝利は貴方の手に転がり込みますわ!!」

「……そうなの、ワクァ?」

「……まぁ、時と場合によっては勝因の一つになり得る要素ではある……」

ファルゥの言葉に未だに曖昧な笑顔のままでヨシが問うと、ワクァは複雑そうな表情でそれに答えた。確かに勝因の一つになり得る要素ではあるが、今回は実力差があり過ぎるから無理だろう、とは言わない。そうしてヨシとワクァが短い会話を交わしている間にも、二人の子供はどんどん追い込まれていく。顔にはかなりの危機感が漂っており、恐怖すら見え始めた。その様子に、ワクァは「見ていられない」という顔で溜息をつくと、呟いた。

「……そろそろ、限界だな」

そう言ってもたれ掛かっていた木から背を外し、急ぐ事も無く戦闘の現場へ歩いていく。ヨシはと言えば、しゃがみ込んだ傍観ポーズのままだ。加勢する様子も、巻き込まれない為に避難する様子も全く見せない。ワクァなら誰一人危険な目にあわせる事無く盗賊達を追い払う事ができるだろうという、相棒への信頼の現われだろうか。甲高い金属音が鳴り響くのと同時にシグの剣が弾き飛ばされるのを目の当たりにしても、彼女は微動だにしなかった。







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