縁の下ソルジャーズ緊急出動!
10
六日が過ぎ、土曜日になった。街の復興は、まだ完了していない。
いつもなら五日間で何とかする技術四班だが、今回の発電所は流石に痛かった。
あまりにも範囲が広く、一度の逆行では直しきれず。ライフラインに関わる施設なので、何度も何度も細かい打ち合わせをしながらの作業になり、予想以上に時間を要した。結局、発電所を直すだけで二日間。今までにない時間のロスだ。
当然、街の人々の恨みは最高潮。SNSには怨嗟の声が溢れているし、朝の挨拶代りに戦隊の悪口を言う者まで出始めている状況だ。
かといって、夜通し作業をする事もできない。数時間使う度に休ませなければ機械が参ってしまうし、操縦できる技術者の数も多くない。今ここで無理をして機械や人を損なえば、次に街が破壊された時に一切直す事ができなくなってしまう。
だからこそ、技術四班の面々は毎日夜になると、ちゃんとオフィスに戻ってくる。今日も今日とて必死に作業を続けた末に帰還しており、現在は全員が栄養ドリンクを飲みながら机に突っ伏していた。
オフィスの隅では、中花が泣きそうな顔をしながら縮こまっている。手にはこれまた栄養ドリンク。ただし、未開封で箱詰めされた物。差し入れのつもりらしい。
「す……すみません……」
蚊の鳴くような声でおどおどしながら謝られてしまっては、誠達も責めるに責められない。……と言うか、元より責めるつもりも無い。
「まぁ、発電所壊しちまったのは痛かったけど、仕方無ぇよ。敵も段々強くなってきてるんだし、ロボット戦の時は建物の被害を気にする暇があったら即行で敵を倒せって普段から言われてるんだろ?」
「でも……」
それでも泣きそうな顔が収まらない中花の頭を、主任の堀田がわしゃわしゃと撫でた。
「気にするなって言っても気にするんだろうな、お前達は。けどな、本当に気にするな。俺達は自分の意思で戦隊の仲間入りをして、技術班に所属してるんだ。お前達が頑張ってるのは知ってるし、街が破壊されるのは怪人が襲い掛かってくるせい。お前達のせいじゃない」
「そうそう。だから、今日はもう帰って、美味しい物を食べてあったかい風呂に入って、寝とけって。どうせまた明日にはあいつら襲ってくるんだからさ。今のうちから英気を養っておかねぇと」
「……はい。あの……ありがとうございます」
立ち上がっておずおずと頭を下げ、中花はオフィスから出ていこうとした。その時だ。
けたたましいアラームが鳴り響く。そして、常に外の様子を映し出しているモニターから爆発音が響いた。
その場に居た全員の顔が引き攣り、誰もが言葉を失う。そして失われた言葉は徐々に復活し、オフィスの中にざわめきを与え始めた。
「な……そんな……」
「まだ一週間経ってないぞ……?」
「けど、これはどう見たって……」
誰かが現状を確定させる言葉を吐く前に、中花が険しい顔付きでオフィスから駆け出る。むしろ、彼のこの行動が、全員に今何が起きているかを確信させた。
敵組織が……怪人が、襲ってきた。
まだ潜伏期間を過ぎていないだろうに。
まだ、街が直りきっていないのに。