ドラゴン古書店 読想の少女と二匹の竜
第3話■幕間・夜のバックヤード■
「しかし、種族を越えて従業員を雇おうと決断するほど、兄者が言語の違いや本の買い取りに頭を悩ませていたとは……」
「勿論、それもある。だが、他にも……ニーナを手元に置いておいた方が良いと思う理由があってな」
「他? 一体どのような……」
「……弟よ……ツヴァイよ。お前は覚えていないか? 我らに名を与えたあの者の事を」
「我らに名を……。そうか。たしかにあの者は我らに……」
「そうだ。あの言葉を思い出したのだ。ニーナの様子を見ているうちにな」
「兄者は、ニーナがあの者と関係があると?」
「まだ、わからぬさ。だが……その可能性もある。しばらく、様子を見たい」
「わかった……。私も、ニーナの様子は気にかけておこう」
「お前は、意識せずとも既にニーナを気にかけているだろう? サイズの違いによる衣食住の不便さなど、私は考えもしなかった」
「茶化さないでくれぬか、兄者……」
「とにかく、全てはこれからだ。明日の朝も早い。今日はもう寝るとしようか、弟よ」
「そうだな……そうしよう。おやすみ、兄者」
「あぁ。おやすみ、弟よ」