ガラクタ道中拾い旅













第七話 闘技場の謀












STEP3 チラシを拾う






























中庭から城への小入口へと続く道を、ヨシは足取り軽く歩いている。ウトゥアに己がすべき事を聞いただけで、心身ともに随分と軽くなったようだ。

心の余裕ができると、視界が明るく、広くなる。ふと、ヨシは足を止め、視線を斜め下へと向けた。

何やら、紙が一枚落ちている。質はあまり良くなさそうで、何事かがずらずらと書かれている。それを手に取り、書かれた文章にヨシは素早く目を通した。

「闘技大会……?」

どうやらチラシであるらしい紙の内容にもう一度目を通し、ヨシは首を傾げた。何故こんな物が城内にあるのかがわからない。

「あ、ヨシさん!」

考え込むヨシの頭上から、声が降ってきた。首を動かして見上げてみれば、真上のバルコニーにトゥモがいる。

「トゥモくん。丁度良かった。これ、何かわかる?」

そう言ってチラシをひらひらと振って見せるヨシに、トゥモは目を細めた。流石に、バルコニーから地上のヨシが持つ紙の内容を読み取る事まではできないようだ。

「ちょっと、そこで待っててくださいっス!」

そう言うと、トゥモは一旦姿を消した。そして、それほど長く待たないうちに、ヨシの元へとやって来る。それから改めて、ヨシの手元の紙を覗き込んだ。

「あぁ、これは毎年闘技場で行われる、闘技大会のお知らせ兼参加者募集のチラシっスね」

「え、これ毎年やってるの?」

目を丸くして、ヨシはトゥモを見た。

「そうっス。毎年秋が終わりに近付くと、国中から腕自慢が集まって開催されるんス。目潰し、金的、脅迫みたいな卑怯な手さえ使わなければ、武器も戦法も何でもアリの大会で……。何でも、その年の収穫を終えて、実りを神様に感謝するためにやるようになったのが、いつの間にか腕試しの大会になったんだとか何とか……。一種の儀式的なお祭りの意味もあるから、王様とお后様も必ず来て、最後の何試合かはご覧になるんスよ! その試合は高覧試合って呼ばれてるっス!」

なるほど、とヨシは頷いた。去年の今頃は、ヨシはまだヘルブ街の住人ではなかった。この大会の事を知らなかったわけだ。

「けど、何でそんなチラシが、お城の中に落ちてたのかしら?」

「あ、多分誰かが落としたんスよ。腕試しの場は必要だからって、兵士は大会参加を推奨されるんス。チラシがそのまま参加の申し込み用紙にもなってるっスから、上官に持たされて、持ち歩いてる兵士も多いんスよ」

苦笑しながら言うトゥモに、ヨシは「へぇ……」と呟いた。

「じゃあ、トゥモくんも出るの?」

「自分は出ないっス。自分が出ると、ドジで色々とやらかして大会の運営に支障をきたしそうだから、って上官から参加を禁止されてるッス」

部署が変わっても、それは変わらなかったらしい。どこかしょぼんとしているトゥモに、ヨシは思わず笑った。それから、ふと思案顔になる。

「ねぇ、トゥモくん? この大会って、誰でも出れるの?」

「そうっスねぇ……流石に投獄されてる囚人は出れないっスけど、それ以外なら腕に自信さえあれば王侯貴族でも花売りの娘でも誰でも出れる、門戸の広い大会っスよ。儀式の意味もあるからか、優勝しても特に賞金が出たりするわけじゃないんスけど……やっぱり勝てば名誉が得られるし、王様の目に留まって武官になるチャンスでもあるっスから。名誉を欲する王侯貴族の子弟と、仕官を求める旅人の参加が特に多いっスね」

トゥモの説明に、ヨシはふむふむと頷いた。そして、もう一度チラシを眺めると、ニヤリと笑う。

「……ヨシさん?」

ヨシの表情が気になったのだろう。トゥモが恐る恐る、声をかけた。するとヨシは、にっこりと笑ってチラシを示す。

「ちょっとね、思い付いた事があるのよ。トゥモくん、今から時間、ある?」

「え? あぁ……今日はもうあがる時間っスから、あるっスけど……」

答を聞いて、ヨシは「よしっ」と手を打った。そして、チラシを大事そうに折り畳み、滞在中であっても肩にかけっぱなしにしていた鞄に仕舞い込む。

「じゃあ、早速行きましょ。今なら、ワクァも時間があるだろうから!」









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