縁の下ソルジャーズ緊急出動!























「まぁ、たしかにそういう話がそろそろ出てもおかしくはないな」

重機を発進させる準備をしながら、岩村は頷いた。

「テコ入れって言うのか? とにかく、ここ数十年で戦士は時々入れ替わってきたし。派手な時には全員が一気に挿げ替えられて、戦隊名が変わった事だって何度かある。日本社会の悪いところでさ、いつまでも結果が出せないでいると、文句を言いだす奴がいるんだよな。残念ながら」

準備が終わり、岩村と誠は二人揃って重機に乗り込む。声掛け確認を行ってから、重機を発進させた。唸るような重低音と共に、重機は街中へと進んでいく。

「まずは、発電所の方に行くぞ。ライフラインは一刻も早く復旧させねぇと」

「はい」

頷き合い、重機は発電所へと頭を向ける。進みゆく重機に向かって子どもが手を振ってきた。誠は振り返そうかと思って手を上げかけたが、隣にいる母親がこちらを睨んでいる気がして、黙って手を引っ込めた。

「……睨まれたか?」

「……睨まれました」

頷く誠に、岩村は苦笑する。

「まぁ、仕方ないよな。一般人からしたら、戦隊はいつまで経っても怪人を壊滅させる事ができなくて、自分達に確実な平和をもたらしてくれない、できそこないの英雄ってところだし。同じ組織に所属してる技術班にも、良い感情は持ってない奴、結構いるんじゃねぇかな?」

慣れた様子で淡々と、岩村は言う。

「あとは……結構、憐みの目を向けられた事もあるな。身内が街を破壊した尻拭いをさせられて可哀想に……みたいな。初瀬、お前ある? 憐みの目を向けられた事」

「いえ、今のところは……」

そっか、と岩村は笑った。

「無いなら、良かった。睨まれるのも嫌なもんだけどさ、俺としては、憐れまれる方がキッツイんだよな。俺達は自分で希望して技術班に所属してるのに、可哀想な人間を見る目で見るんじゃねぇ! って言うか」

わかる気がする。相手に敵意が無い分、憐みの目で見られるという事は、睨まれるよりも感情の処理が大変そうだ。

「まぁ、あんな感じでさ……」

岩村はそう呟いて、話を元の軸に戻した。

「戦いが長引くと、どうしても俺達に対して敵意を抱く奴が増えてくるんだよ。言っちゃ悪いけど、戦士が敵意を抱かれてる分はそんなに問題は無いんだ。あいつらは強いし危ない前線にいるから、何だかんだで戦いを妨害される事も無い。真偽はどうあれ、街の平和を守っている奴に敵意を抱くような奴は、自分から危ない場所に出向いたりしないからな。けど、俺達みたいな技術班にまで敵意が向けられるようになったら……」

それは問題だろうという事は、誠にもわかる。戦うすべを持たない技術班相手なら、手を出して鬱憤を晴らそうとする者もいるかもしれない。基本的に戦いの場程危なくない場所での作業を妨害されたりしたら、街の復興がその分遅れる。遅れればその分だけ、余計に戦士達や技術班が恨まれる。悪循環だ。

「だから、戦士は定期的に入れ替えられるんだよ。技術班は知識的にも技術的にも入れ替えが難しいけど、戦士は強くて肝が据わってれば、とりあえず務まるって上は考えてるからな」

もっとも、中花は暫く入れ替えられる事は無いだろう、と岩村は言い足した。病弱である点さえ除けば、中花は歴代戦隊の中でもかなり強い部類に入るからだ、というのが理由だ。

「一気に入れ替えれば、やっぱり一時的に戦力は弱まるし、連携も悪くなるからな。よっぽど全員が弱いとか高齢とかじゃなけりゃ、少しずつ取り替えていく事になる」

だから、もし誰かが辞める事になるとしたら、それはやっぱり最年長の世良だろう。そう言って、岩村は息を吐き出した。

「世知辛ぇなぁ……」

「……」

何も言葉を返す事ができず、誠は助手席で黙り込んだ。内側を沈黙で満たしながら、重機は街を直すために進んでいく。エンジン音の静かな車が普及しているこの時代にそぐわない、派手な駆動音を響かせながら。











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