縁の下ソルジャーズ緊急出動!























「いつもの始まったぞ! 怪人の巨大化だ!」

技術四班のオフィスで、主任の堀田が険しい叫び声を発した。場の緊張感が一気に高まり、一同はモニターに視線を集める。

休みのはずの日曜日だが、オフィスにはもうほとんどのメンバーが揃っている。全員、「どうせまた今日あたり来るだろう」と見越して、すぐに動けるよう待機していたらしい。休みの日ぐらいちゃんと休めと誰もが言いたいところだが、街の平和がかかっているためか、そんな優しい言葉を実際にかけてくれる者にはついぞお目にかかった事がない。

とは言え、流石に全員着の身着のままでオフィスに来たらしく、私服の上にジャケットを羽織っただけの状態だ。

そんなオフィスに、誠は息を切らして駆け込んだ。彼が最後であったらしく、オフィス中の視線が一時誠に集まる。

「あれ、早かったな初瀬。運動音痴の足だから、もうちょっとかかると思ってたんだけどな」

「何で僕のスタート地点を知ってる風なんですか」

「残念だったな。もう少しで桃子嬢とデートできたってのに」

「何で知ってるんですか!?」

悲鳴をあげながら問うと、一同は一斉にモニターを指差した。モニターに映っている場所は、先ほどまで誠が世良と話をしていた場所だ。つまり、そういう事である。

「残念会はあとで開いてやるから、今は仕事だ。早くジャケット着な」

「はい!」

言われるまでも無く、誠は急いでジャケットの袖に腕を通す。気が引き締まり、先ほどまでの浮かれた気持ちは全て消え去った。……と言いたいところだが。

気持ちがもやもやとする。原因はわかっているのだが、それは今すぐにどうこうできる事ではなくて。

「……あの、先輩……」

早めに吐き出してしまおうと、近くにいた先輩に声をかける。だが。

「あぁぁぁぁぁぁぁっ!」

オフィスに悲鳴とも罵声とも取れる叫び声が響き渡った。慌ててモニターに目を遣れば、ロボットが巨大化した怪人によって後ろに倒されている。大きなビルが一棟、半壊しているのが見えた。

更に立ち上がったロボットが勢いをつけて地面を蹴り、怪人に飛び蹴りを喰らわせた。そして、勢い余って怪人もろとも街から少し外れた場所にダイブしてしまう。尚、そこには発電所がある。

「ライフラインはあかぁぁぁぁぁん!」

そう叫んだのは、誰だったか。ひょっとしたら、全員だったかもしれない。ぎゃあぁぁぁぁぁぁ! という悲鳴が室内に響く。

一瞬、室内の全ての電気が消え、そして再び点灯した。自家発電に切り替わったのだ。だが……室内は明るくなっても、一同の顔は暗い。

「やべぇ……これやべぇって……」

「発電所って逆行にどれだけ時間かかるんだ? いや、その前に! 誰か急いで役所に連絡入れて、避難所の開設急がせろ! 今回復旧に時間がかかりそうだ!」

バタバタと数名がオフィスから飛び出し、もしくはあちらこちらに電話をかけ始める。

「岩村、早瀬! お前らは格納庫で待機だ! 戦いが終わったらすぐに出動できるように、エンジンあっためとけ!」

「はい!」

「わかりました!」

頷き、誠は先輩――岩村と共にオフィスを出ようとする。その時だ。

ズズン……と大きな音がした。次いで、爆発音も。振り向けば、モニターには中花達が怪人を倒したところだった。今の爆発音は、怪人が倒れて散ったものか。

いつものお決まり通り、ロボットが勝利の決めポーズを取る。どんな辛勝であろうとも、このポーズは欠かさない。勝利のポーズを決める事で、人々は人類の勝利を知り、安心する事ができるのだから。

ロボットの後ろには、街が見える。今回はかなりの乱闘だった。そのために、いつも以上に街は滅茶苦茶になってしまっている。これを五日間で全て元に戻すのは、いくら時間逆行のマシンが優秀でも骨だ。

「あっちゃあ……」

岩村が頭を掻きながら呟いた。

「こりゃ、酷いな。いくら悪いのは奴らだっつっても、流石に今回はお上に怒られるんじゃないか……?」

怒られるのは、誠達じゃない。前線で戦っている、中花達だ。

命を懸けて戦っているのに、悪いのは敵の怪人達なのに。街を破壊し過ぎれば、怒られるのは中花達で。その話を聞く度に、誠は理不尽な物を感じてしまい仕方が無い。かと言って、誠がしゃしゃり出て何が変わるというわけでもなく。

釈然としない気持ちを抱えて格納庫まで再び歩き出した誠の脳裏に、先ほど街で聞いてしまった噂が蘇る。

その噂と、理不尽から生まれる釈然としない気持ち。それらが混ざり合って、発電所が壊される前に感じていたもやもやが復活した。しかも、より強くなって。

早く吐き出してしまわなければ、己のメンタルがまずい。そう感じた誠は

「あの、先輩……」

再び、岩村に声をかけた。焦りと苛立ちと、そして少々不思議そうな感情と。それらを浮かべた顔を振り向けた岩村に、誠は思い切って言葉を発する。

「えっと、その……さっき、街の中で噂になっていたんですけど……」

言葉を探す。何か、やんわりと包みつつ言いたい事が伝わる言葉は無いだろうか?

……無い。まず、技術屋の人間に遠回しな表現は相性が悪い。伝えるなら、論理的に、もしくはストレートに。そもそも、これは遠回しにして曖昧に尋ねて良い話ではない気がする。

覚悟を決めて、誠は問いの言葉を岩村に投げかけた。

「このままだと、世良さんが辞めさせられるかもしれないって……本当ですか……?」











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